平成26年10月21日、マルマンに対し元親会社である「MAGねっとホールディングス」が提訴をした模様である。内容はマルマンが日本振興銀行から借入をおこす際にMAGねっとホールディングスが保有していたマルマン株を担保として差し入れたが、MAG社の当時の親会社が民事再生の手続開始の申し立てを行ったため、日本振興銀行はマルマンに対し担保権を実施し、株を売却した。この為、MAG社は物上保証人の求償権に基づき「1億9,388万円及び内金9,552万5,843円に対する平成21年4月24日から、内金9,733万6,288円に対する同月27日から、内金101万7,869円に対する訴状送達の日の翌日から、いずれも支払済みまで年6分の割合による金員を支払え」と提起している。

物上保証人の求償権とは民法第351条「他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。」ことを言う。要するに、他人債務によって所有権を失った際に物上保証人は債務を弁済する義務はないのであり、失った所有権に対する金員を支払えと言うわけである。

さて、現在のマルマンの資産状況はと言うと四半期報告書によると第3四半期、「現金及び預金」の額は369,857千円、「受取手形及び売掛金」1,353,824千円の合計1,723,681千円、これに「有価証券」113,437を足して1,837,118千円、これから「貸倒引当金」88,964千円を差し引くと、1,748,154千円となる。厳しくチェックする「当座資産」の内容だが、当座比率は約70%となる。90%以下は危険圏である。これを鑑みて提訴された事案に支払が生じた場合は、もっと経営は悪化するというわけである。

マルマンには、もうひとつの疑念がある。これまで危ない企業を分析してきた筆者にとって上場企業が監査法人を変える行為は、危険と言える。平成26年2月28日に開示された内容によると、新日本監査法人から清和監査法人に衣替えしている。内容は「資産項目の期首残高及び平成26 年9月期第1四半期における勘定科目全般の妥当性等に関する質問を受けておりますが、それらを適時に対応することが困難であると判断し、同監査法人と協議の上、監査契約を合意解約いたしました。」とある。さて、上場企業が監査法人の指摘する妥当性を問われて、適時対応が困難を理由にすることが出来ないと言うこと自体があり得ない。「資産項目の期首残高」を指摘されていると言うのも、期首の時点から監査法人は疑念を抱いていたことになる。

過去にも監査法人をそのヤバさから変える企業はたくさんあった。これらの企業は現在、窮地もしくは上場廃止の憂き目を見て来たのである。新しいところで行くと、【JQ 2315】SJIである。窮地中の窮地である。ここも衣替え監査法人は「清和監査法人」である。さて、金融庁のHPからの清和監査法人を見てみよう。

処分対象:清和監査法人
•業務改善命令(業務管理体制の改善)
•1年間の業務の一部の停止命令(契約の新規の締結に関する業務の停止)
(平成26年7月10日から平成27年7月9日まで)
処分理由:
清和監査法人については、別紙のとおり、運営が著しく不当と認められるため。(別紙割愛)

これが「清和監査法人」の実態である。以前から、駄目企業の監査法人を引き継ぐことが常態化していた監査法人である。いわゆる掃き溜め企業の駆け込み寺と言うわけである。清和はかなりリスクの高い法人の監査を受け入れ、誤魔化しに誤魔化しを重ねてきた「ブラック監査法人」である。マルマンもここを頼ったわけである。さて、マルマンの行方はどうなるのか。行く先を見極めていきたい。