上場企業の情況
国内の上場社数の減少が続いている。昨年末時点で東京や大阪
など5つの証券取引所に上場する企業数は3646社で、1年
前より93社減った。上場社数の減少は3年連続。経営破綻によ
る上場廃止は減ったものの、親子上場の解消などが多かったう
え、新規株式公開(IPO)する企業が低水準だった。これに
対し、中国など他のアジアの証券取引所では上場企業の増加が
続いている。
2010年だけで128社が株式市場から姿を消した。
主な要因は以下のとおりである。
  ・親子上場解消による上場廃止・・・54社
  ・MBOによる上場廃止・・・15社
  ・経営破綻による上場廃止・・・7社
年末ベースでみた日本の上場企業数のピークは2007年の
3942社。その後の3年間で296社(8%)の純減となっ
た。
親会社が子会社を上場廃止にしたケースで計54社で、09年
の37社から増えた。日立製作所はTOB(株式公開買い付け)
などを通じ、日立マクセルをはじめ計5社を完全子会社化。
キリンホールディングスは架空販売など不適切な取引が発覚し
た子会社のメルシャンを株式交換で完全子会社にした。
MBO(経営陣が参加する買収)などで株式の非公開化を選ん
だのも産業用研磨紙大手の三共理化学など15社。社内体制を
点検して開示する「内部統制報告制度」の導入などで上場維持
費用は上昇傾向にある。コストがメリットに見合わないと判断
した企業が少なくない。
経営破綻を理由とする上場廃止は日本航空や武富士など7社に
とどまった。リーマン・ショック直後の混乱で23社あった
09年から大きく減った。
市場からの退出が増える一方、新規上場は依然低水準が続いて
いる。JXホールディングスなど再編で発足した13社を除く
と、実質では第一生命保険など22社。09年の19社よりや
や増えたが、景気低迷で業績が証券取引所の審査を満たせなか
ったベンチャー企業も多かった。
一方で、アジア各国では上場企業数が増えている。国際取引所
連盟(WFE)の統計によると、10年末時点での上場企業数
は中国の深セン証券取引所で1169社と1年間で339社増
加した。上場基準を緩和した「創業板」と呼ぶ新興市場が急拡
大。上海証券取引所でも24社増、インドのムンバイ証券取引
所も79社増えた。
これに対し、米ナスダック市場が1年前より74社、ニューヨー
ク証券取引所も10社減少。ロンドン証券取引所は122社減る
など、日本以外の先進国でも上場企業数の減少が目立った。