世界最大の小売業、米ウォルマート・ストアーズが、東証1部上場
だった大手スーパー「西友」に実施したTOB(株式公開買い付け
)を巡り、TOB情報の公表前に同社社外取締役が株取引をしてい
た疑いがあるとして、証券取引等監視委員会(SEC)が金融商品
取引法違反(インサイダー取引)の疑いで調査していることが判明
した。SECは西友株を巡る一連の株取引について、慎重に解明を
進めている模様。
西友の公表資料などによると、西友は2007年10月22日、包括的業務
提携をしていたウォルマートが同社への出資比率を引き上げ、完全
子会社にするためのTOBを行うと発表した。
これに先立つ同月4日、TOBが西友の取締役会に提案され、社外
取締役らも含めた役員全体でTOBの賛否を巡る協議をしていた。
この情報の公表前後この社外取締役の家族名義の口座などを通じて
株取引が行われたとみられる。
SECは今年3月から調査を進めており、この社外取締役が数百万
円から1千万円程度の利益を得たとみている。
この社外取締役とは、72歳で、ファッション業界ではその名を知ら
れた女性で、男女雇用機会均等法導入のはるか前に大企業に入社、
男性と張り合って仕事をし、関連会社役員を経て、現在、化粧品
会社の役員を務める傍ら、ファッション関連の財団法人が運営する
学校の名誉学長を務めている。
米国に留学、ハーバードビジネススクールを卒業、海外にも知己は
多く、経済産業省や文部科学省の審議会委員といった公職にも多
数、就いており、まさに「女性管理職」「女性経営者」の草分け的
存在。ファッション界という華やかさもあって、憧れを持つ女性は
少なくない。ユニクロの柳井会長が最も尊敬する人として講演会で
紹介したこともある。
かような社会的地位がある経営者が、何故、インサイダー取引に
手を染めるのか。心のどこかに、自分は許されるという特権意識が
あるのでろうか。経営者たる者、「李下に冠を正さず」の心構えは
忘れるべきではないと指摘したい。