最近では、発生することが無くなったが、自己株買い期間に
重要事実が発生し、これを公表する前に、自己株買いを続け
た場合、インサイダー取引で摘発され、課徴金を課される
事例があった。
●コマツ、自己株買付けのインサイダー取引で課徴金4378万円
 2007年3月12日
証券取引等監視委員会は3月9日、小松製作所(コマツ)の役員
が証券取引法の禁じるインサイダー取引を行ったとして、同社
に4378万円の課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告した。
証取監視委によると、コマツの執行役員がオランダ子会社
Komatsu Financeの解散決定を知りながら、公表前の2005年
7月4日―13日にコマツの計算で自己株131万6000株を11億7746
万円で買い付けた。
当時コマツの株価が上昇傾向で推移しており、インサイダー
取引を行った期間の買付け総額と、公表翌日の終値で全株買付
けた場合の金額12億2124万円の差額を課徴金とする。
コマツは同日、法令違反の事実を認めて株主と関係者に謝罪し
た。社内管理体制の強化や社員教育の徹底で再発防止に努める
という。
●証券監視委、大塚家具のインサイダー取引で3044万円の
 課徴金勧告 2007年5月9日
証券取引等監視委員会は5月8日、大塚家具がインサイダー取引
を行ったとして、金融庁に3044万円の課徴金納付命令を出すよ
う勧告した。
証券監視委によると、大塚家具の役員は、配当予想の修正を行
うという重要事実を知りながら、公表前の2006年2月月10日―22
日に、大塚家具の計算で自己株7万9000株を3億3295万5000円で
買い付けた。
配当予想の修正を発表した翌日の終値は4600円まで上昇した。
この価格で7万9000株まで買い付けた場合の金額と、インサイ
ダー取引を行った期間の買付け総額の差額3044万円を課徴金と
する。
大塚家具は同日、証券監視委の勧告について声明を出した。同
社は、株主に対する利益還元策などの一環として、2004年6月9日
より2006年2月22日まで、配当予想の修正とは無関係に計画的、
継続的に自己株の市場買付けを行ってきたと主張。今回の勧告
では、重要事実の決定について、法律解釈に関する見解の相違
があったという。「勧告は真摯(しんし)に受け止め、社内管理
体制を見直す」(大塚家具)としている。
自己株取得原価と時価の差額を、課徴金として課されるようで
ある。したがって、含み益が出ていない場合、摘発されないケー
スも多いようである。最近では、インサイダー取引に該当してし
まわないように、自己株買いを決めた企業が、実際の買付けを信
託銀行や投資顧問会社に委託するケースが増えているということ
で、摘発を回避しているようである。過去、怪しい事案も多いで
あろうが露見していないだけの様でもある。今後、監視を続けて
いきたい。