幻冬舎(7843) 上場廃止決定
経営陣による自社買収(MBO)を目指すジャスダック上場の
出版社の幻冬舎は15日、都内で臨時株主総会を開き、MBO
実施に必要な定款変更の議案が承認された。この結果、同社は
3月16日に上場廃止となる。MBOには、英領ケイマン諸島
に所在し同社株を3分の1超保有する投資ファンドが反対して
いたが、株式が立花証券の名義となっており、同社は株主権の
行使をせず、MBOの阻止はできなかった。
「出版社が上場にあまり向いていないことが身に染みた」
総会を終えた幻冬舎の見城徹社長は、報道陣を前にこう感想を
漏らしたという。議案は、見城社長が代表を務めるTKホール
ディングスが全株を取得する手続で、総会に参加した株主の
3分の2以上の賛成が必要な特別決議で可決された。TKはす
でに株式公開買い付け(TOB)で58・17%の株式を保有
しており、残り株を強制的に取得できることになった。
幻冬舎が、1株22万円でMBOのためのTOBを発表したの
は昨年10月。これに対し、その直後に設立された投資ファン
ド「イザベル・リミテッド」が幻冬舎株を買い進め、12月末
現在で議決権ベースで35・44%取得した。3分の1を上回
り、重要事項の拒否権をもつ株式比率である。幻冬舎側は、買
い取り価格を24万8300円に引き上げたが、イザベルは応
じず、さらに高値での引き取りを求めた。今回の総会では、
イザベルが反対すれば議案は否決され、上場廃止も頓挫する可
能性があった。しかし、イザベルは信用取引で取得していたた
め、名義は仲介した立花証券のままで、立花は、「中立の立場」
から議決権行使を見送り、その結果、議案が成立した。
イザベルが今後、TOB価格が安すぎるとして提訴する可能性
も残されている。
 
実際、幻冬舎のTOB価格は、発表直前の終値に約5割上乗せ
したとはいえ、会社の解散価値を示す1株当たりの純資産額の
約35万8千円を大きく下回る。理論上、経営者がMBO後に
会社を解散すれば、巨額の利益を得られる。
最近、MBOによる上場廃止に踏み切る企業が続出しているが、
安値での買い取りにより、株主が損を強いられるケースもあり、
安易なMBOは株主の利益に反すると指摘したい。