ブランドバッグの卸売や販売を主たる業務とするサマンサタバサの今期の業績はひどかった。売上高は前期比13.7%減、営業利益は29.6%減、最終的に損失を出す決算内容だった。業種が若干似ているモリト株式会社や、株式会社リーガルコーポレーションは増収増益だったのに対してサマンサタバサが減益だったのは、サマンサタバサ独自に抱える問題があったことを示している。
それは、ほかでもない創業社長の寺田和正氏によって引き起こされた淫行事件の傷痕である。寺田氏が2011年の末に経営幹部や取引関係者を連れ立って、何十人もの女を集めて自分の別荘でパーティを開いた。そこで気分がよくなったのか、未成年の女性を自室に連れ込み強姦しようとして訴えられたのである。この事件が表ざたになるまで様々な経緯があったが、結果として週刊誌で記事が発表され株価は暴落した。インターネット上にはまだ寺田氏に関する記事が掲載されている。
サマンサタバサのバックの顧客層は10代から20代の若い女性だったので、その顧客層に訴えられたのは最悪だった。株価は回復したようだが、今期の損失に見るように、一年以上たった今でも禍根は残っているわけだ。いずれにせよ、寺田氏のワキの甘さ、軽率さが原因だっただけに、責任は問われてしかるべきである。
このほか、サマンサタバサの今期赤字の理由には、ここ数年の拡大戦略の失敗がある。同社はブランド整理損6億75百万、関係会社整理損1億11百万円の減損を計上したが、これは08年以降始まった店舗拡大路線の失敗であると思われる。サマンサタバサは昨年末に銀座・新宿などで展開するセレクトショップ「エイトミリオン」を閉鎖した。同店は08年にオープンしたが、この時期からサマンサタバサは店舗を激増させてきた。07年は139店舗だったが、08年は231店、今期は312店舗と増え続けてきた。売上高は08年まで急増していたが、それ以降今期に至るまで横ばいであるから、売上に結びつかずコストばかりかかって失敗に至ったのだろう。
経営の失敗とブランド価値の毀損である。こうした責任を寺田氏はどう感じているのだろうか。今年の株主総会で、株主から昨年の淫行事件の責任を問われた寺田氏は、「個人の問題」で一蹴したという。会社に損害を与えながら、未だに説明責任すら果たしていないにも関わらず上場企業の社長でいられるのだから、サマンサ株主もなめられたものである。