平成26年10月24日、エナリスは異例のIRを発表した。内容は「一部のWEBサイトの書込みについて」と題する適時開示である。

 

内容を追って行くと、「当社の平成25年12月期の有価証券報告書に記載されております「テクノ・ラボ株式会社」に対する売掛金約10億円について、実態の伴っていない会社に対するものであるとの書込みがございました。」とまずある。まずは検証してみよう。「テクノ・ラボ」と言うキーワードが出てくる。このテクノ・ラボとはどのような会社なのかという事から検証しなければなるまい。会社設立が昭和63年10月25日、いまから26年前に登記されている。

 

定款の一番最初にくる事業の目的は「天然抽出物質を利用したガン及びウィルスの民間療法製品の開発及び販売」となっている。続いてウィルス系の防止対策の生薬、農薬などと続く。後半が「太陽光発電関連」となっている。登記簿を見る限りは、平成25年あたりから、太陽光に事業が移っていったようである。取締役は平成22年に就任し、平成25年にほとんど辞任している。履歴事項証明で照会をかけても3年前までしか分からない。平成22年は今から4年前である。昭和63年から存在している会社なのでそれ以前は何をしていた会社かは不明である。

 

WEBサイトの追い込みは「テクノ・ラボ」の本店登記の所在地を問題視している点、またエナリスの財務諸表にも振れて、10億円の売掛が実態のない会社である「テクノ・ラボ」にあると言う、「実態と数字でエナリスを迫ったわけである。」これに対して、エナリス側が異例のIRを発表したものである。IRの後半には「本件に対する当社の対応として、悪意のある風説の流布等には、法的措置も含めて断固たる措置を行います。」と締めくくっている。

 

問題は2つに絞られる。「テクノ・ラボ」の実態と「エナリス」の決算による数字である。まず、実態があるのか否か。「登記」をしている時点では存在はしているが、会社運営としての実態があったかは不明である。

 

また、数字だが有価証券報告書に偽りの報告をすれば、「虚偽記載」になる。至極真っ当に真実を記載したのであれば、売掛金10億円については問題ではないことになる。しかし、架空の売り上げ計上ではなく、なぜ売掛金が問題なのかと考える方もおられよう。売掛金は、立派な「資産」であり、資産に計上されるからである。WEBサイト側は、不正にありもしない売買を売掛金とし、資産計上を行い決算を誤魔化したと言いたかったのであろう。

 

エナリス側はこう公表している。「売掛金に見合う他社発行の小切手を担保として受領し、入金まで設備の所有権を留保する等の債権保全を図りながら平成25年12月13日に発電設備を引渡し、10億円で販売いたしました。当社は、発電事業開始後の電力を買い取ることを企図しておりました。」とある。ここで、「売掛金に見合う他社発行の小切手を担保として」が気になる。小切手は支払わなければ、「テクノ・ラボ」が用意した「他社」の小切手が不渡りになる。この小切手が売掛金に見合う相当額とすれば約10億円となろう。この相当額を他社が用意したと言うのであれば、この会社は飛んでいるに違いない。小切手は「小切手に記載された振出日の翌日から10日以内に銀行に支払呈示する。」もので、呈示期間経過後の翌日から6ヶ月で時効である。

 

また、「平成26年6月にテクノ・ラボ社に対する売掛金10億円の代金不払による契約解除を通知し、債権債務を解消すると同時に当該発電設備を、当該発電事業者の事業性を評価した東証一部の金融機関に販売いたしました。」とエナリス側は公表している。平成25年12月13日に発電設備を引渡し、その小切手は決済に回されているはずではないのか。それであれば10日後には不渡りになっているはずであり、不渡り時点で契約解除になるはずではないのか。実際は契約解除に至るまで実に約6ヶ月もの時間がかかっている。これは、「エナリス」の決算期が12月であることと関係あるのではないかと考える。事実、IRにも「当該発電事業者の事業性を評価した東証一部の金融機関に販売いたしました。また、販売代金10億円は、当該金融機関より平成26年12月末迄に入金されます。」とある。

 

これは、痛々しいIRであることが窺われる。結果は、東証一部の金融機関?(どこの?)が12月末に支払を行うかどうかと言うことに尽きる。

 

ちなみに株価はストップ安、これは筆者の予想だがまだ落ちる。