ベネッセの苦戦は続いている。2014年7月に発覚した個人情報の流出事件では、最大で3504万件に及んだ。これに端を発した会員の減少は続き、15年度、16年度3月期も純利益が最終赤字となり、2期連続赤字となっている。17年度の会社予想での純利益は0となっている。

問題の会員数は、2015年に420万人いた会員が1年間で95万人減少したと発表している。

ベネッセは岡山県岡山市に本社がある。前身は、福武書店という。地方から全国へ通信教育の「進研ゼミ」で名を馳せた。出版では、「たまごクラブ」「ひよこクラブ」が有名だ。

個人情報流出以後、代表取締役が3ヶ月ほどで3人目となる迷走を呈して安定性がまるでない。問題は、一旦離れた顧客を取り戻すことは出来ないと認識することから始めることだ。

Padを使用した通信教育を試すも空振り、新たな顧客の獲得はできなかった。こういう、新たな顧客を現状の通信教育で獲得することは無理とは言わないが、難しい。また、時間もかかるだろう。政治の場合は、忘れてくれるまで待てばいいが、商売ではケチの付いたものは忘れない。

結果、現在残っている会員に対し、新しいアプローチをして、口コミで会員数を徐々に増やすしか手立てはない。

それは何か? その答えは、アプリではないか。バーチャルスクールを運営する。本物の先生は必要ない。全てアバターのようなバーチャルな教師陣という設定。もちろん生徒もアバターだ。

これなら、「こどもちゃれんじ」から「進研ゼミ」まで応用が利く。楽しく、遊びながら学ぶ。どうせ、一度は嫌われた身である。トライ&エラーで何でもやってみることだ。

これはデジタル化である。好調だった事業が、ベンチャーな破壊者によって大打撃を受ける時代がきているのだ。嫌われついでにデジタル化に取り組めばいい。

結果を急ぐと、ろくなことがない。急がば回れというように、肩ひじを張らずに再度ビジネスを構築してみてはどうか。

筆者は、岡山での暮らしが長かった。よくベネッセの本社前を通ったものだ。懐かしさもある。福武總一郎最高顧問、父福武哲彦は一度、倒産という辛酸を舐めて、福武書店を再興し借金を返済した。それが、今のベネッセである。

顧問にも業績回復は出来るはず。懸念は、米系投資ファンドあがりの現社長の安達保で、果たして結果が出るのか。事業再生のプロらしいが、手法と創出、事業再生は手法であり、顧客獲得は創出である。まったく異なるものである。

株主は、安達保社長に括目していく必要がある。

<文中敬称略>