企業犯罪、経済犯罪を罰する法律の規定と、公訴時効について記してみたい。特に企業犯罪では、特別背任、業務上横領、有価証券報告書虚偽記載、インサイダー取引、私文書偽造等が行われやすいことを、特筆したい。
●背任罪(刑法247条)
刑法に規定された犯罪類型の一つである。他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときに成立し、この犯罪を犯した者は5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる。
→公訴時効は5年
●特別背任罪(会社法960条、961条)
会社法に規定された犯罪類型の一つである。背任罪の特別法として規定されたもので、会社の取締役など会社経営に重要な役割を果たしている者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときに成立する。未遂も罰せられる(962条)。
10年以下の懲役、1000万円以下の罰金に処せられる。
→公訴時効は7年
●単純横領罪(刑法252条)
自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
→公訴時効は5年
●業務上横領罪(刑法253条)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
→公訴時効は7年
●詐欺罪(刑法246条)
人を欺いて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得る(例えば無賃宿泊をする、無賃乗車するなど、本来有償で受ける待遇やサービスを不法に受けること)行為、または他人にこれを得させる行為を内容とする犯罪のこと。未遂も罰せられる(250条)。10年以下の懲役。
→公訴時効は7年
●有価証券報告書の虚偽記載(金融商品取引法197条)
金融商品取引法に違反する犯罪で、懲役刑まで定められている。また金融商品取引所(証券取引所)の上場廃止基準に該当してしまう。このため、虚偽記載が発覚すると、上場企業やその経営陣にとっては、きわめて深刻な事態を迎えることになる。提出者(役員等)は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金又はこれらの併
科。提出会社は7億円以下の罰金。
→公訴時効は7年
●インサイダー取引(金融商品取引法166条)
上場会社または親会社、子会社の役職員や大株主などの会社関係者、および情報受領者(会社関係者から重要事実の伝達を受けた者)が、その会社の株価に重要な影響を与える重要事実を知って、その重要事実が公表される前に、特定有価証券等の売買を行う事をいう。インサイダー取引がされたことにより利益が生じたか否かを問わず、刑罰の対象となる。5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれらの併科(第197条の2-13号)。得られた財産の没収または追徴、法人の場合は、行為者を罰するほか、当該法人も5億円以下の罰金が科せられる(第207条 両罰規定)。
→公訴時効は5年
●私文書偽造行使罪 (刑法159条1項)
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
→公訴時効は5年
●公正証書原本不実記載等の罪(刑法157条1項)
公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる。
→公訴時効は5年
●電磁的記録不正作出及び供用の罪(刑法161条の2)
人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
→公訴時効は5年