昨年まで6年で64社が上場廃止
株式市場で自ら上場を廃止する企業が相次いでいる。2010
年は経営陣が自社の株式を株主から買い上げる手法(MBO)
で10社が上場廃止となった。今年になってから6件、2月は
立て続けに5件のMBOが発表された。
●02月07日 田中亜鉛鍍金(5980)
●02月05日 アートコーポレーション(9030)
●02月03日 「TSUTAYA」のCCC
●02月02日 エノテカ(3049)
●02月01日 ワークスアプリケーションズ(4329)
●01月10日 イマージュHD (9947)
日本でMBOが本格化した05年以降、累計70社が市場を去
ることになる。株価低迷などで厳しさを増す株主の目や、上場
に伴うコストから逃れ、中長期的な視点で経営に取り組むとい
う名分にはなっているが、株式非公開の際の買い取り価格が低
く、既存株主に損失を強いる事例も目立っている。
MBOを実施した企業が挙げる利点は、短期的な株価変動や株主
への利益配分などにとらわれず、自社が持つ強みを長い目で育て
られることだ。大規模な資産売却など大胆なリストラ策に踏み切
る際にも意思決定が速まる。
カネ余りも背中を押す。株式を非公開化すると増資などによる
大規模な資金調達の道は狭まるが、金融機関が貸し出し縮小に
直面するなか、一定の信用力を保てれば融資や社債などで必要な
資金を手当てできる。取引所に支払う費用や情報開示などに使う
コストとの見合いで、上場の損得を見極めやすくなった。
実際、金融機関はMBOに積極姿勢で対応している。08年秋の
リーマン・ショック以前のMBOは、企業の技術やブランド力
などに着目した投資ファンドが主導した。だが足元では経営陣が
自ら金融機関から資金を手当てする例が増えている。MBO向け
融資はリスクを伴う分、利ざやは4%前後と高い。メガバンクの
一行では、「現在、30社程度からMBO融資の相談があり、うち
約半分が上場企業」という。
2005年のアパレル大手、ワールドによる株式非公開化が
MBOブームの先駆けとなった。06年以降、上場企業による
MBO件数は年10~15社で推移してきた。昨年の新規株式
公開(IPO)は22件とピークだった00年の約1割に留まった。