東電株 マネーゲーム化
東京電力株がマネーゲーム化している。福島第1原発の事故を受
けて5日、約59年半ぶりに上場来安値を更新した東京電力株だ
が、原発廃炉費用、莫大な賠償金支払いや「一時国有化」への観測
も飛び交っているが、東電株をまとめて買った投資家の正体は、
何者であろうか。
この日の東京株式市場で、東電株は一時、前日終値比72円安の
370円まで下落、1951年12月11日に付けた終値として
の上場来最安値(393円)を約59年半ぶりに下回った。震災
前の3月10日終値は2153円であり、下落率は、80%を超
えいる。「東電株は基本的には売り一本。日経平均株価指数の
『先物売り』と、東電株を除いた日経平均採用224銘柄の『現物
買い』を組み合わせた“合成東電株売り”の手法を使う投資家もい
るほど」と業界情報筋は話す。これは裁定取引と呼ばれる投資方法
の一種で、日経平均の値動きにかかわらず、東電株が下がった分だ
け利益を得られる。
売り一色の市場の中で、東電株を大量に購入した投資家の存在が市
場で話題となった。3日連続ストップ安となった3月31日に約
4000万株、金額にして約185億円の商いが成立している。
どんな投資家が東電株をまとめ買いしたのか。落ちるナイフに手を
出すなというのは市場の鉄則であるが、「落ちてくるナイフを素手
でつかむようなこうしたリスクの大きい注文は、ヘッジファンドの
短期売買の典型的な手口」である。値動きが大きい銘柄に対して
巨額の資金を投じ、一気に利益を稼ぐという手法である。
一方で、中国の存在を指摘する向きもある。東電株の約1・30%
を保有して上位株主に名を連ねる「SSBT OD05
OMNIBUS ACCOUNT TREATY CLIENTS」
なる中国系のソブリンファンドである。電力株は外国人投資家の保
有規制があるため、買収目的は考えづらいが、暴落局面で“逆張り”
を行って買い増したのでは、という推測をする市場関係者もいる。
中国マネーは、虎視眈々と日本企業買収を狙っている。東電株が
本格的「日本買い」のきっかけになる可能性が大であると指摘した
い。