上場会社の中には、慢性的な赤字で債務超過に陥るなどしながら、なぜか何年も生きながらえている不思議な企業がいくつかある。彼らが存続している理由は、株という打ち出の小槌で無限大に市場から金を引き出しているからである。本来投資家というのは、投資対象の事業や決算をよく分析するものだが、日本の投資家は会社のいうことを鵜呑みにして危ない会社に金を入れがちだ。
 JSQ上場の「石山Gateway Holdings」(JQ7708、以下、ゲートウェイ)もなぜ企業が存続しているのか不思議なボロ会社だ。買収者の名前をそのまんま冠するという単純さ。何年も赤字を垂れ流し続けたが、前期(第31期、25年6月期)黒字化発表や新規事業の連発もあり、PER約1000倍、PBR約16倍という市場の過度な好感を得ている。同社の発展を期待している投資家には残酷だが、この会社は極めて杜撰な経営をしている。

▼「VanaH」石山久男が買収
 社名に「石山」とついたのは、VanaHの石山久男が筆頭株主になったからである。天然水素水「VanaH」を販売している会社であるが、「国連認証」を謳って景表法違反を指摘されたり、会員にVanaHが上場すると騙って金を集めておきながら、上場しなかったという詐欺まがいの噂が絶えない。今回のゲートウェイについても、会員に500万ずつ買わせているという情報もある。
 発端は資金繰りで窮地に陥っていたゲートウェイ社長の三木隆一が、エイチエス証券時代の友人で㈱チキキャピタルコーポレーションの富岡和治に相談したところ、金の出してとして石山を紹介されたという。石山はVanaHから1億4千万、個人として3千万を貸し出した。
 ところがゲートウェイは借入返済の目途が立たず、デットエクイティスワップ(債権の株式化)と増資によって石山が50%近い筆頭株主になった。なお、チキキャピタルに対してもゲートウェイは債務があったが、これも返済の目途が立たずに債権譲渡され、譲渡先にDESを行っている。本質的に、借りた金を約束通り返せる状態にないことが見て取れる。

▼粗利を超える「顧問料」の怪
 ゲートウェイは慢性的な赤字体質であった。度重なる増資によって債務超過スレスレの状態を維持してきた。銀行はほとんど相手にしていないので、借入先は三木の知人か石山など、手当たり次第借りているようである。
 グループ企業のほとんどが債務超過か赤字である。前期は売上高が約10億円と、前期より増収しているように見えるが、新たに買収した株式会社マーファス(今年3月に取得)、東京電装株式会社(今年4月に取得)による業績寄与がなければ、第三四半期の時点で約1億5千万円(前期は3億9千万)しか売り上げがなかったので、業績予想に遠く及ばない結果になっていただろう。
 ゲートウェイの根本的な問題は経営者である三木隆一にあると考えられる。同社の経常利益は過去五年間赤字である。例えば、28期(22年6月期)には粗利の時点でマイナスである。にもかかわらず、同社は1億近い役員報酬と約7千5百万円の顧問料を支払って、赤字額を広げている。
 29期(23年6月期)は売上総利益661万円に対して役員報酬5703万円、顧問料5940万円、30期(24年6月期)は売上総利益3901万円に対して役員報酬3959万円、顧問料4751万円。粗利を超える顧問料を支払い、業績に見合わない役員報酬を一丁前にもらっているのである。業績予想を達成できなかった責任をとって、役員報酬の9割を返上したMCJの高島勇二を見習ったほうがいい。

 今年8月にゲートウェイは悲願の黒字化を達成したと発表した。
「当社は設立31年、10年前に上場以来ここ8年にわたり、ずっと赤字でしたが 現社長三木が3代目社長として3年前より再生上場会社として経営し、直近6月にやっと黒字化することができました。」(同社ホームページより)
 しかしながら経常利益、税引前当期純利益は未だに赤字である。キャッシュフローもマイナス状態で、「黒字化することができました」などと胸を張れるものではない。数字の上だけの黒字である。
 黒字化の決定的な要因は固定資産売却による特別利益であるが、その内容は極めて疑わしい。今年4月に買収した東京電装が持つ神奈川県厚木市の簿価644万円の物件を、1900万円で個人に売却したという。はたして、神奈川県の僻地にある物件を、簿価の約3倍で購入するとは正気の沙汰ではない。

▼三木隆一のカネ回り
 ゲートウェイは普通では考えられないことが起きる会社である。粗利を超える顧問料の支払い、簿価の三倍で物件を売却する。資金不足で計画や借入返済が実行できないといったことは枚挙に暇がない。24年2月の㈱コズミックとの業務提携解消、GMHoldings㈱による訴訟提起、㈱SPCの債務放棄のトラブルはゲートウェイの資金不足に起因する。
 身の丈に合わない役員報酬をもらってるはずの三木隆一個人も、かつて下馬の自宅を担保にゲートウェイ大株主から高利で金を借りていた。三木はゲートウェイからも金を借りているが、そのわりに同社の受取利息が少ない。利率の設定がきちんと行われているか気になるところだ。

 ゲートウェイは多角化経営の路線をひた走っている。メーカー事業、不動産、アパレル、旅行、健康関連、さらには発電まで・・・。今期は売上30億、利益2億円を目指すというが、怪しげな噂はたくさんあり、実際に問題を抱えながら、目標が達成できるのだろうか。JAL元幹部の羽根田勝夫やVanaH、興行師までもが出入りし、代議士の山本幸三も投資していた魑魅魍魎たる会社だけに、今後の行く末を注視していきたい。

(文中敬称略)