朝日土地建物株式会社(代表・緒方光行)は、東京都町田市に本社を置く不動産会社である。1985年創業から、東京の町田や八王子、神奈川の横浜や藤沢など、首都圏のベッドタウンを中心とした物件を扱い、ピーク時には30億を売り上げていた。帝国データバンクが取りまとめた業種別売上高ランキングでは、全国29237社中51位、都内では6344社中30位(2012年9月調査)と、それなりの規模の会社である。
 一般に、大企業と言えば上場企業を想像しがちだが、こういう会社は資金が潤沢にあるため、わざわざコンプライアンスを順守したり、外部株主との面倒な付き合いが必要となる上場をする必要もあまりないわけである。
 朝日土地建物はピーク時の2007年から売り上げは減少傾向にある。そうした苦境の中で、同社が不正行為に手を染めていたことがこのほど明らかになった。誘引行為、つまり売買仲介の過程において、手付金を買主に貸し付ける行為である。
 2008年9月、朝日土地建物の横浜支店は横浜市西区のマンションの売買を仲介した。ところが成約間近になって買主に手付金が無いことが発覚。本来この売買契約はお流れとなるが、横浜支店の課長であるAは、朝日土地建物OBから手付金名目で金を借り、そこから55万円を買主に貸し付け強引に売買を成立させた。明白な誘引行為である。
 さらに翌年、Aは同じOBから支店長を連帯保証人として165万円を運転資金名目で借り入れている。支店の運転資金が枯渇すること自体異常と言わざるを得ないが、横浜支店ぐるみで前述のような違法行為が行われていたことがわかる。
 この一連の事実関係について、朝日土地建物社長の緒方光行は当初「弊社より買主様に手付金を貸与した事実はありません」と否定した。
 しかし当サイトでは、「平成20年9月15日付、○○(原本は実名)担当の以下売買契約において、買主の手付金がなく契約ができないため、上司である私、A(原本は実名)が今般その手付金を買主に貸すため、55万円の借り入れを○○(原本は実名)よりする事について相違ありません」と記載された念書を保持している。また横浜支店のAと支店長が連帯保証人となった借用書もある。
 そうした指摘に対して、朝日土地建物は「買主と連絡がとれない」ことを理由として事実確認をしていなかったが、当サイトが買主に接触したところ「朝日土地建物にお金を建て替えてもらった」と認めた。緒方は事実確認をすると約束したが、未だに連絡はない。
 ちなみに誘引行為は宅建業法47条に抵触し、朝日土地建物が加盟する東京都宅建協会の規定により15日間の免許停止、つまり営業停止の処分が下ることとなる。朝日土地建物は甘んじて処分を受けるべきだ。
(文中敬称略)